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dplyrのsummarise()におけるグループ化メッセージと対策

問題の概要

dplyrの開発バージョン0.8.99.9003以降で、group_by()summarise()を使用する際に、以下のようなメッセージが表示されるようになりました:

summarise() regrouping output by 'year' (override with .groups argument)

このメッセージはエラーではなく、結果自体は正しく計算されていますが、なぜこのメッセージが表示されるのか、そしてその意味を理解することが重要です。

メッセージの意味

このメッセージは、dplyrのグループ化構造の変化についての情報提供です。デフォルトでは、summarise()は最後のグループ化変数を削除し、残りのグループ化構造を保持します。

具体例で理解する

r
library(dplyr)

# 単一のグループ化変数の場合
mtcars %>%
  group_by(am) %>% 
  summarise(mpg = sum(mpg))

この場合、メッセージは「summarise() ungrouping output」となり、グループ化が完全に解除されます。

r
# 複数のグループ化変数の場合
mtcars %>% 
  group_by(am, vs) %>% 
  summarise(mpg = sum(mpg))

この場合、メッセージは「summarise() regrouping output by 'am'」となり、最後のグループ化変数(vs)が削除され、amのみでグループ化された状態になります。

.groups引数による制御

dplyr 1.0.0以降、summarise()には.groups引数が追加され、グループ化の挙動を明示的に制御できるようになりました。

r
# 最後のグループ化変数を削除
mtcars %>% 
  group_by(am, vs) %>% 
  summarise(mpg = sum(mpg), .groups = "drop_last")
r
# 全てのグループ化を解除
mtcars %>% 
  group_by(am, vs) %>% 
  summarise(mpg = sum(mpg), .groups = "drop")
r
# 元のグループ化構造を維持
mtcars %>% 
  group_by(am, vs) %>% 
  summarise(mpg = sum(mpg), .groups = "keep")
r
# 各行を独自のグループとして扱う
mtcars %>% 
  group_by(am, vs) %>% 
  summarise(mpg = sum(mpg), .groups = "rowwise")

TIP

.groups引数を明示的に指定することで、警告メッセージを抑制できます。

実践的な使用例

基本的な使用法

r
# 元のコード例
df %>% 
  group_by(year, week) %>% 
  summarise(average = mean(total_rodents), .groups = "drop")

段階的な集計

r
# 複数段階の集計処理
result <- mtcars %>%
  group_by(cyl, am) %>%
  summarise(
    avg_mpg = mean(mpg),
    sd_mpg = sd(mpg),
    .groups = "keep"
  ) %>%
  # 次の集計処理でcylごとに操作
  group_by(cyl) %>%
  summarise(
    min_avg_mpg = min(avg_mpg),
    max_avg_mpg = max(avg_mpg)
  )

メッセージが表示される理由

Hadley Wickham氏によるR for Data Scienceでは、この挙動について以下のように説明されています:

複数の変数でグループ化されたtibbleを要約すると、各要約は最後のグループを剥ぎ取ります。後から考えると、これはこの関数を動作させるための最良の方法ではありませんでしたが、既存のコードを破壊せずに変更するのは困難です。 何が起こっているかを明確にするために、dplyrはメッセージを表示します。

バージョン間の違い

WARNING

dplyr 1.0.0以前のバージョンでは、このメッセージは表示されず、デフォルトで「drop_last」の挙動でした。このため、古いコードで予期せぬグループ化が残っていることに気づかない場合がありました。

ベストプラクティス

  1. 明示的な指定: コードの意図を明確にするために、常に.groups引数を明示的に指定しましょう
  2. 一貫性: プロジェクト内でグループ化の戦略を統一しましょう
  3. メッセージの理解: メッセージを無視するのではなく、何を伝えようとしているのか理解しましょう
r
# 推奨される書き方
df %>%
  group_by(var1, var2) %>%
  summarise(
    mean_value = mean(value),
    count = n(),
    .groups = "drop"  # 明示的に指定
  ) %>%
  # 次の処理(グループ化が解除されていることを前提)
  filter(mean_value > 10)

トラブルシューティング

メッセージが表示される主な状況:

  1. 複数のグループ化変数を使用した場合
  2. summarise(across(everything()... を使用した場合
  3. 結果の行数が変動する集計を行った場合

INFO

このメッセージはあくまで情報提供であり、結果の正確性には影響しません。ただし、後続の処理でグループ化が期待通りであることを確認することをお勧めします。

まとめ

dplyrのsummarise() regroupingメッセージは、グループ化構造の変化についての有益な情報です。.groups引数を適切に使用することで、コードの意図を明確にし、予期せぬ挙動を防ぐことができます。最新のdplyrバージョンでは、グループ化の挙動を細かく制御できるため、データ分析のパイプラインをより明確に記述することができます。