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Dockerエンジン接続エラー: \.\pipe\docker_engine_linux の解決方法

Windows環境でDockerを使用している際、「Error response from daemon: open \.\pipe\docker_engine_linux: The system cannot find the file specified」というエラーが発生することがあります。この記事では、このエラーの原因と効果的な解決方法を詳しく解説します。

問題の概要

このエラーは、Dockerデーモン(バックグラウンドサービス)とDockerクライアント(コマンドラインインターフェース)間の通信が正常に行われていない場合に発生します。具体的には、名前付きパイプ \\.\pipe\docker_engine_linux を通じた接続が失敗している状態です。

主な症状:

  • Dockerコマンドの実行時にエラーメッセージが表示される
  • Docker Desktopが「起動中」状態で停止する
  • コンテナの起動やイメージのプルができない

基本的なトラブルシューティング

1. Docker Desktopの再起動

最も簡単で効果的な解決策の一つです。

TIP

システムトレイのDockerアイコンを右クリック → 「Restart」を選択してください。これでDockerエンジンが完全に再起動されます。

2. WSLの再起動

DockerがWSL2バックエンドを使用している場合、WSLの状態に問題がある可能性があります。

powershell
# 管理者権限でPowerShellを開き、次のコマンドを実行
wsl --shutdown

WSLシャットダウン後にDocker Desktopを起動し、「Restart」通知が表示されたらクリックします。

WARNING

wsl --shutdown が応答しない場合、タスクマネージャーから「Windows Subsystem for Linux」プロセスを強制終了してください。

3. サービスと実行権限の確認

Docker Desktop Serviceの再起動:

  1. Windowsの検索ボックスに「サービス」と入力
  2. 「Docker Desktop Service」を探す
  3. サービスを停止→開始する

管理者権限での実行:

  • Docker Desktopのショートカットを右クリック → 「管理者として実行」

高度な解決方法

WSLの更新

古いWSLバージョンが原因で問題が発生することがあります。

powershell
# WSLを最新版に更新
wsl --update

Dockerエンジンの切り替え

WindowsコンテナとLinuxコンテナを切り替えることで問題が解決することがあります。

powershell
# Dockerインストールディレクトリに移動
cd "C:\Program Files\Docker\Docker"

# Linuxエンジンに切り替え
./DockerCli.exe -SwitchLinuxEngine

Windows機能の有効化

必要なWindows機能が無効になっている場合があります。

powershell
# 管理者権限のPowerShellで実行
Enable-WindowsOptionalFeature -Online -FeatureName @("Microsoft-Hyper-V", "Containers") -All

設定ファイルの修正

Dockerの設定ファイルを直接編集する方法もあります。

  1. %APPDATA%/Roaming/Docker/settings.json を開く
  2. 以下の設定を確認または追加:
json
{
  "integratedWslDistros": [],
  "enableIntegrationWithDefaultWslDistro": false
}
  1. 変更後、Docker Desktopを再起動

データのパージとクリーンインストール

DANGER

以下の方法は最終手段です。すべてのローカルDockerイメージ、コンテナ、ボリュームが削除されます。必要なデータは必ずバックアップしてください。

  1. Docker Desktopをアンインストール
  2. 以下のフォルダを削除:
    • %APPDATA%\Roaming\Docker
    • C:\Users\<ユーザー名>\.docker
  3. PCを再起動
  4. 最新版のDocker Desktopを再インストール

インストール時にWSL2の有効化を求めるプロンプトが表示されますが、問題が解決しない場合はHyper-Vバックエンドを選択することも検討してください。

環境別の特別なケース

GitHub Actionsセルフホストランナー

「Access is denied」エラーが発生する場合、サービスアカウントの権限に問題がある可能性があります。

  1. サービスアプリケーションを開く(services.msc)
  2. 「GitHub Actions Runner Service」を探す
  3. プロパティ → ログオンタブで「ローカルシステムアカウント」を選択

改行コードの問題

CRLFとLFの混在が原因でエラーが発生することがあります。Docker関連ファイル(Dockerfile、docker-compose.ymlなど)の改行コードが統一されているか確認してください。

IntelliJ統合時の問題

IntelliJなどのIDEからDockerを使用する場合、Docker Desktopが起動しコンテナリストが表示されている状態である必要があります。

予防策とベストプラクティス

  1. 定期的なアップデート: Docker DesktopとWSLを最新版に保つ
  2. 設定のバックアップ: 定期的にDockerの設定をエクスポート
  3. ディスク容量の管理: 定期的に不要なイメージやコンテナを削除
  4. ログの確認: 問題発生時はDocker Desktopのトラブルシューティングからログを確認

まとめ

\\.\pipe\docker_engine_linux エラーは様々な要因で発生しますが、基本的なトラブルシューティングから始め、段階的に高度な解決方法を試すことでほとんどの場合解決できます。本記事で紹介した方法を順に試してみてください。

INFO

2023年1月30日リリースのDocker Desktop for Windows 4.16.3以降では、この問題は大部分解決されていると報告されています。古いバージョンを使用している場合はアップデートを最初に試してください。

問題が解決しない場合、Docker公式フォーラムでさらにサポートを得ることができます。