Microsoft.AspNetCore.Http.Abstractions 廃止パッケージ移行ガイド

問題の背景

.NET 7 Blazor プロジェクトで Microsoft.AspNetCore.Http.Abstractions (2.2.0) を使用している場合、パッケージが非推奨(deprecated) とマークされ、Visual Studio から警告が表示されます。このパッケージは従来 HttpContext へのアクセスを提供していましたが、.NET Core 3.0 以降のバージョンでフレームワークに統合されました。.NET 7 では、ASP.NET Core の基本機能はメタパッケージ Microsoft.AspNetCore.App に含まれ、個別のパッケージインストールは不要です。

@page "/"
@{
    // 非推奨パッケージ経由でアクセスしていたHttpContext
    var httpContext = HttpContext; // Microsoft.AspNetCore.Http.Abstractions (2.2.0) で提供
}

廃止パッケージの代替方法

解決策1: パッケージ参照を完全に削除

非推奨パッケージを直接参照せず、.NET 7 の組み込み機能を使用します。プロジェクトファイル(.csproj)からパッケージ参照を削除します：

<!-- 削除する非推奨パッケージ参照 -->
<ItemGroup>
    <!-- <PackageReference Include="Microsoft.AspNetCore.Http.Abstractions" Version="2.2.0" /> -->
</ItemGroup>

代わりに、.NET 7 SDK に含まれる以下のアセンブリを暗黙的に参照：

• Microsoft.AspNetCore.Http.Abstractions.dll (バージョン 7.0.0)
• Microsoft.AspNetCore.Http.Features.dll

仕組みの変更

.NET Core 3.0 以降、主要なASP.NET Coreコンポーネントは共有フレームワークとして提供されます。.NET 7 をターゲットにするプロジェクトは、明示的なNuGet参照なしで自動的にこれらの機能を利用できます。

解決策2: IHttpContextAccessor の利用

BlazorでHttpContextにアクセスする正しい方法は、依存性注入(DI)経由でIHttpContextAccessorを使用することです：

builder.Services.AddHttpContextAccessor(); // DIに登録

@inject IHttpContextAccessor HttpContextAccessor

@code {
    protected override void OnInitialized()
    {
        var httpContext = HttpContextAccessor.HttpContext;
        // 認証チェックやヘッダー操作など
    }
}

トラブルシューティング

エラー: "型 'HttpContext' が見つかりません"

このエラーが発生する場合、プロジェクトが正しく.NET 7をターゲットしているか確認してください：

<PropertyGroup>
    <TargetFramework>net7.0</TargetFramework> <!-- 必須 -->
</PropertyGroup>

WebAssemblyプロジェクトでの注意点

Blazor WebAssembly (クライアントサイド) では、サーバー側のHttpContextは使用できません。代わりに以下のアプローチを採用：

// クライアント側でリクエスト情報を取得する場合
var uri = NavigationManager.Uri;
var query = new Uri(NavigationManager.Uri).Query;

関連パッケージ移行ガイド

他の非推奨パッケージでも同様の移行が必要です：

非推奨パッケージ	.NET 7での対応
Microsoft.AspNetCore.Authentication	Microsoft.AspNetCore.App フレームワークに統合
Microsoft.AspNetCore.Mvc.Core	フレームワーク組み込み
Microsoft.Extensions.Logging.Abstractions	自動参照

ベストプラクティス

1. パッケージ参照の定期的な監視

   dotnet list package --deprecated

2. フレームワーク組み込み機能の優先使用
3. ライブラリ開発時はターゲットフレームワークを明示：

   <TargetFrameworks>net7.0;net8.0</TargetFrameworks>

重要

Blazor ServerプロジェクトでHttpContextを直接使用する場合、レンダリング中の状態変更に関連する問題が発生する可能性があります。常にIHttpContextAccessorを通じてアクセスし、コンポーネントライフサイクルとの整合性を確保してください。

結論

Microsoft.AspNetCore.Http.Abstractionsパッケージは不要です：

1. .NET 7プロジェクトから非推奨パッケージ参照を削除
2. DI経由でIHttpContextAccessorを使用
3. プロジェクトのターゲットフレームワークをnet7.0に設定
4. 他の非推奨パッケージも同様の方法で移行

これにより警告を解消し、最新のASP.NET Coreアーキテクチャに準拠した安全な実装が可能になります。