Android Emulator プロセスの終了エラー:原因と解決策
問題の概要
Android Studio の更新後、仮想デバイス(AVD)を起動しようとすると「The emulator process for AVD has terminated」というエラーが発生し、エミュレータが強制終了する問題について解説します。
この問題は Android Studio 2020.3.1 以降のバージョンで頻繁に報告されており、様々な原因が考えられます。
基本的なトラブルシューティング手順
以下の順番で解決策をお試しください。
1. エラーログの確認
まずはエラーの根本原因を特定するためにログファイルを確認します。
C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Google\AndroidStudio<バージョン>\log\idea.log
ログファイルには以下のような具体的なエラーコードが記録されている場合があります:
exit code -1073741515 (0xC0000135)
exit code -1073741819 (0xC0000005)
- 特定のDLLファイルの欠落メッセージ
- パス関連のエラー
2. 環境変数の設定
エミュレータのパスが正しく設定されていることを確認します:
# システム環境変数 PATH に追加
C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Android\Sdk\emulator
また、特別な文字を含むユーザー名を使用している場合は、AVDホームディレクトリを変更すると解決することがあります:
# システム環境変数に追加
ANDROID_AVD_HOME = C:\android\avd
主要な解決策
Microsoft Visual C++ 再頒布可能パッケージのインストール
最も効果的な解決策の一つです。最新のVisual C++ 再頒布可能パッケージをインストールしてください:
# x64 システム用
https://aka.ms/vs/17/release/vc_redist.x64.exe
# x86 システム用
https://aka.ms/vs/17/release/vc_redist.x86.exe
TIP
この解決策は多くのユーザーで効果が確認されており、DLLファイルの欠落による問題を解決します。
ハイパーバイザーの設定調整
WindowsではHyper-VとAndroid Emulatorの競合が発生することがあります。
# Hyper-Vを無効化(再起動が必要)
bcdedit /set hypervisorlaunchtype off
# 後でHyper-Vを再有効化する場合
bcdedit /set hypervisorlaunchtype auto
WARNING
Hyper-Vを無効にすると、WSL2やDockerなどのHyper-Vに依存する機能が使用できなくなります。
エミュレータの更新
Android Studio内でエミュレータを最新版に更新します:
- Android Studio を開く
- Tools > SDK Manager を選択
- SDK Tools タブを開く
- Android Emulator にチェックを入れて更新
ディスク容量の確認
十分な空き容量があることを確認してください。ディスク容量不足もこのエラーの原因となることがあります。
詳細なトラブルシューティング
コマンドラインからのエミュレータ起動
Android Studioから起動できない場合、コマンドラインから直接起動を試みると、より詳細なエラーメッセージが表示されることがあります。
cd C:\Users\<ユーザー名>\AppData\Local\Android\Sdk\emulator
emulator -list-avds
emulator -avd <あなたのAVD名> -verbose
特定のDLL問題への対処
ログに特定のDLLファイルの欠落が表示される場合:
vulkan-1-999-0-0-0.dll
の問題には、ファイル名をvulkan-1.dll
に変更glib-2-vs11.dll
の欠落には、信頼できるソースからダウンロードして配置
DANGER
DLLファイルをダウンロードする場合は、信頼できる公式ソースからのみ入手してください。不明なサイトからのダウンロードはセキュリティリスクがあります。
仮想化技術の確認
BIOS/UEFI設定で仮想化技術(Intel VT-x または AMD-V)が有効になっていることを確認してください。また、Windowsの機能で「Windows Hypervisor Platform」が有効になっているか確認します。
プラットフォーム別注意点
Windows 特定の問題
- Visual Studio 競合: Visual Studioをインストールしている場合、そのデバイスマネージャーからエミュレータを起動すると解決することがあります
- HAXM と Hyper-V の競合: Intel HAXM と Hyper-V が同時に有効になっていると問題が発生することがあります
Linux 特定の問題
古いLinuxディストリビューションではGLIBCのバージョンが古く、エミュレータの実行に問題が発生することがあります:
# エミュレータの互換性エラー例
GLIBC_2.30' not found
GLIBC_2.29' not found
この場合の解決策:
- システムのGLIBCを更新する
- 古いバージョンのAndroidエミュレータを使用する
最終手段
上記の方法で解決しない場合、以下の徹底的な手順を試してください:
- Android Studioと関連コンポーネントを完全アンインストール
- 以下のディレクトリを手動で削除:
AppData\Local\Android
AppData\Local\Google\AndroidStudio<バージョン>
- 最新の.NET Frameworkをインストール
- Android Studioを再インストール
まとめ
「The emulator process has terminated」エラーは様々な原因が考えられますが、最も一般的な解決策は:
- Visual C++ 再頒布可能パッケージのインストール
- 環境変数PATHの正しい設定
- エミュレータの更新
- ハイパーバイザー設定の確認
エラーログを確認して具体的なエラーコードを特定し、それに応じた対処を行うことが最も効果的です。問題が解決しない場合は、Android Studioのバージョンを一時的にダウングレードするか、エミュレータの代わりに実機デバッグを検討してください。